
有機・無機化合物が結晶となるときに「結晶多形」というものがあります。
つまり同じ物質が結晶化する場合でも、その結晶の仕方が違ということです(例えば、↑↑と並んでいたり、↑→、→←とならんでいたりなど)。
あの水ですら、6種類もの結晶多形をがあることがしられています。
この「結晶多形」の違いにより、同一化合物であっても溶解度や融点などが変わってしまうことがあります。
現在の化学技術ではこの結晶多形について経験則の域を出ず、その制御・理論構築が不十分です。
そんなことが何の役に立つかと思われるかもしれませんが、これを解明することで、様々なものに応用できます。
最近、固相反応の論文を読んだのですが、固相反応は分子同士が止まった状態で反応するので結晶構造に依存します。この結晶構造を制御できれば、特定の位置に結合させたりキレイに配列させることで、高収率が期待できます。
他にも、医薬品などでは「溶解速度」というものは医薬品の性質上、とても重要な要素ですが、つまりある医薬品が体内で1時間でとけるのと10時間かかるのでは、吸収のされ方が全然違う。
医薬品のような高付加価値商品にかけられる研究開発費用は、現在1品目につき約100億近いとされています。
にもかかわらずドラッグデザインや有機合成の進展に比べ、結晶多形についての研究は大変遅れています。
実際に研究途中では溶解度の高かった化合物が、研究が進み純度が上がった途端により安定な結晶形が出現し、石のような結晶になって打ち切りになってしまうことも少なくありません。
こういったただ結晶の形を解明するだけでも大きな科学の進展につながります。
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